この日は拓海にとって一番嫌な日である。大罪を犯し、罪の十字架を背負ってもなお、普通の人として生きている。裁かれることもせずにだ。だが、それを亜美に言うわけにはいかない。

「こ、この日は……その……」

言葉を濁す拓海に、亜美は呆れたようにため息を吐く。そして、一枚の写真をポケットから取り出し、拓海の前に見せた。

「私の本当の名前は黒木亜美じゃなくて、鷲家莉乃(わしかりの)って言うの。でも名前を言ってもあんたにはわからないと思うから、整形する前の顔を特別に見せてあげる。これが答えよ」

その写真には、美しい亜美とは真逆の醜い容姿をした女性が写っていた。ふくよかで、一重で、唇は薄く、鼻も低い。だが、この女性を拓海は目にしたことがある。それを思い出した刹那、拓海の体は震え始めた。

「あ、ああ……」

ただ、震えた声でそう言うしかできない。そんな拓海に、亜美ーーー否、莉乃は嬉しそうに笑う。

「あら、ニュースの取材の映像を覚えていてくれたの?嬉しいわ」