「はい！カット！」

「このシーンを持ちまして、一ノ瀬みなみ役東堂さくらさんオールアップです。」

スタッフの声が聞こえ、さくらさんが最後のシーンだったことに気づいた。

「短い間ではございましたが、このドラマに出演することができたこと本当に光栄に思っています。

そして今回の経験を活かせるように頑張りたいと思います。

携わってくださった全ての皆様、ありがとうございます。」

ずっと思っていた。

彼女程の大女優がなんで私みたいな落ちぶれ女優がヒロインを努める作品の脇役として出演してくれたのか。

そんなことを考えていると、彼女がこちらにやって来た。

「リサちゃん。短い間だったけどありがとう。」

「いえ、こちらこそありがとうございました。」

「リサちゃんは、私と共演するの気まずかったよね。ごめんね。まぁるいとも気まずいか！」

彼女は、冗談っぽく笑いかけてくれた。

「そうですね…」

「私ずっとあなたに謝ろうと思ってたの。あの時のこと。」

あの時のこと？

「あの時、リサちゃんも知ってると思うけど、るいのこと好きだったの。

だからるいの関心を惹くことばかり考えていたの。

だから変な匂わせとかしちゃって。

あのスウェットもあなたとのお揃いの物って本当は知ってたの。

本当にごめんね。」

彼女は、和やかな表情をしていた。

「あの時のこと、ずっと後悔してた。

私があなたとるいくんの仲を引き裂いたも同然だから。

ごめんね。」

彼女は、申し訳ない表情をしていた。

「いえ、謝らないでください。」

「さっきのシーンは、本当よ。

私たちあの時のクリスマス、何もなかったの。

ドラマの打ち上げがあって、その日、私は、るいくんに告白したの。

でもるいくんに振られたわ。」

「そうだったんですね…」

「しかも彼女が大事なんですって。

彼女程僕のことを理解してくれている人は、いないって。

彼女がいるから僕は、この仕事を頑張れてるって言ってたわよ。

今、るいくんと話せないと思うから代わりに私が伝えるわ。」

彼女は、彼を囲っているスタッフたちを指してそう言った。

「だからリサちゃんは、私のことなんか気にしないで今でもるいくんのことが好きならば、るいくんの気持ちに答えてあげてね。

じゃあ、私行くね。

あ！私、結婚するんだ！

結婚式来てね！」

彼女は、幸せそうに私に報告してくれた。