「何だ……椿さんからもらったの着けてんのか」

 鎖骨の下から現れたのは、あの海色のイースターエッグだった。

「あ、はい……ショーの間は着けられないので、せめて夜だけでもと」

「悪いけど外すぞ。……其処(そこ)らに置いとけるもんじゃないな」

「ケース持ってきてます。(カバン)のサイドポケットの……あ、自分で」

 モモは凪徒に外されたネックレスへ手を伸ばしながら、腰を上げかけたが、場所を聞いた凪徒はいち早く鞄へ寄り、

「お前は其処でじっとしてろ。動くなっ、逃げんな!」

「に、逃げませんて~」

 苦々しく笑うモモの向こうで、凪徒はケース……ならぬあのマトリョーシカを見つけ、幾つも現れる人形を取り出しながら、徐々に苛立(いらだ)ちを(つの)らせた。

「まだこんなのに入れてんのかよ~面倒臭い! 後でちゃんとしたボックス買ってやるからそっちに入れろよな」

「はい……」

 ──なんか……、椿さんに見られてるみたいで居心地悪いな……。

 凪徒は全ての人形を収納し直しながら、ふとよぎった思いに失笑した。

 おもむろに後ろへ振り向かせて、鞄のポケットに再度しまい込んだ──。