「ん……ん? うん!? あ……すみっません!」

「別に……俺が風呂から出てから、まだ十分程度だ」

 あたふたと起き上がったモモに釣られて、凪徒も向かい合うように倒していた身を起こした。

「それより、よだれ垂れてるぞ」

「えっ!」

「ぷっ……嘘だよ」

 裏返った驚きの声と、マッハの速さで口元を隠したモモの仕草に、凪徒はいつになく自然な笑みで吹き出していた。

「こんなあったかい所でそんな厚いの着てたら風邪引くぞ。ほれ、バンザーイ」

「バンザーイ……って、え?」

 ──せ、先輩に服脱がしてもらっちゃった……。

 つい掛けられた言葉に反応し、両手を上げてしまったモモのパーカーは、見事に裏返されて上空へ消えていった。

「まだそんなシャツ着てんのか」

 目の前に現れた水玉のコーデュロイに、凪徒は呆れて吊り目を丸くする。

「だ、だから汗かいちゃったかな~って、お風呂入ってきますー」

 モモは次に定められたターゲットを()らすように立ち上がったが、

「きゃああっ」

「頭の上で大声出すなって」

 ウエストの両脇を捉えた凪徒の両手が鮮やかにジャージを降ろして、モモは咄嗟(とっさ)にシャツの裾を引き、足の付け根を隠していた。