*夜桜の約束?* ―再春―

 それから十分程が経過して──。

「モモ~お前も風呂入るかぁ?」

 ふわふわの白いバスローブを(まと)った凪徒は、(したた)る髪をタオルで(ぬぐ)いながら、扉を開けて声を掛けた。

 けれど揺らぐ布から垣間見える景色には、動く物が一切見当たらず、またその問いに対する答えも返ってきはしなかった。

「……こいっつ……」

 ベッドのこちら側で微動だにしない、突っ伏した背中に気付き覗き込む。

「寝てやがる……!」

 ふつふつと込み上げる何かを抑えた凪徒は、思わず拳を震わせた。

 あどけない寝顔に噛みついてやろうかと、その衝動と独り格闘していた──。