君に、ブルースターの花束を

タバコを吸いながらジークフリードは歩く。今回もソフィアは見送りに来なかった。だが、彼としてはその方が心が軽い。前に戦場に行った時のことを思い出し、顔を見るのが何故か怖いと思ってしまう。

(一体何なんだ、この気持ちは……)

胸の辺りにそっと触れてみる。そこにはあの日、ソフィアに貰った押し花があった。愛はない。だが、何故か離すことができず、持って来てしまった。

「余計な荷物なんだが……」

ジークフリードが列車に乗り込もうとしたその時、「ジークフリード様」と声をかけられる。すっかり聞き慣れてしまったソプラノに振り返ると、そこにいたのはいつものソフィアではなかった。

「その格好は……」

ソフィアはいつもの貴族らしい装飾がたくさんの豪華なドレスではなく、陸軍の深緑の軍服を見に纏っていた。目を見開くジークフリードに、ソフィアはニコリと微笑む。

「私も戦います!あの国には、私の女学校の友達が住んでいるんです!」

「そうか……」