君に、ブルースターの花束を

「あの人、本当にソフィアさんと婚約してるんですか?」

「政略結婚させられるらしいけど、戦場にいる婚約者を気にもかけないのはどうかね〜……」

ヒソヒソとそんなことを話す兵もいた。だが、ジークフリードはそんな言葉に心を痛めることはしなかった。人から言われた言葉などどうでもいい。ただ、この戦争に勝ちたい。それだけを考えている。

「ジークフリード少佐!」

戦場からキャンプ地にソフィアのいる班が戻ってくる。笑顔で駆け寄ってくるソフィアの顔や軍服には敵兵のものと思われる返り血がベッタリと付いていた。

戦場にいるため、ソフィアの綺麗な顔はすっかり傷んでしまっている。華奢だった体には傷が多く増え、顔も汚れている。それでも彼女の美しさは消えない。

「今日も少佐がご無事でなによりです」

「……」

ニコリと笑うソフィアの言葉を無視し、ジークフリードは顔を逸らして彼女から離れる。

それから数日後のことである。ソフィアが死んだと聞かされたのは……。