「失礼します」

私は意を決して応接室を開けると
黒木さんと仁坂は何やら楽しそうに
談笑していた。

私は出来るだけ
目を合わせないように
顔を伏せたままテーブルに
珈琲のカップを並べていく。

「桜良ちゃん、ありがとう。
そういえば、仁坂さんの住んでる✕✕市は
桜良ちゃんと同じだよね？」

私は黒木さんの問いにギクリと肩を震わせた。

「ええ。はい..」

「へえ。そうなんですか？」

仁坂は私の制服のネームプレートに
目を落とすと
「上杉って、、
もしかして同じ中学だった上杉さくらっ？！」　
びっくりしたように叫んだ。

「ええっ？そうなの？！」

事情を知らない黒木さんは
驚きの表情で言った。

「へえー、随分変わったから
気づかなかったよ。」

仁坂は私を下から上まで
舐め回すような目で見つめながら言った。

私はハハッと苦笑いしながら
「すみません。お仕事の邪魔をしたらいけないので失礼します」
そう言って、すぐに応接室を出た。