その健気な笑顔に竜海の胸はキュッと締め付けられる。

「どうしようかな．．．行くのやめようかな．．」

竜海さんは困ったように呟いた。

私は竜海さんがクレーム処理に行くのが億劫になっているのだと勘違いして
「大丈夫です！きっと先方もそんなに怒ってないと思いますから！」
元気づけるように言った。

その答えに竜海さんは
「そういう意味じゃあないんだけどな．．．」
フッと笑みをこぼした。

私は訳が分からず、ポカンとした表情で
竜海さんを見つめた。

すると竜海さんは今度は切なげ顔を歪ませると

「やっぱり誰にも渡したくないな．．．」

小さく呟いた。


「えっ．．？」


「なんでもない。また連絡するから」


「あっはい..今日はありがとうございます。
仕事頑張ってください」

私ははそう言って車から降りると
車の中から手を振る竜海さんに手を振り返して車が見えなくなるまで見送った。

すると、突如、私のバックの中の
スマートフォンが震えた。

私はスマートフォンを取り出して確認すると
メールボックスに登録されていないアドレスから一件メールが届いていた。

そして、そのメールの内容に
ゾクリと背筋が氷った。


『皆藤竜海と別れろ』

メールにはその一言だけが添えられていた。

私は恐怖で思わずスマートフォンを落としてしまう。