しかも、その時気づいたのだが、
スカートの後ろのチャックが開いたままで
お尻を突き出したように転けた私は
ピンク色のパンツが彼に丸見えだっただろう。

穴があったら入りたいという言葉はあの時の私にはピッタリだった。

今までずっと会社の廊下やエレベーターで専務を見かける度に喜んでいた私はその時から専務避けるようになった。

恥ずかしくてどんな顔をして会えば良いか分からなかったからだ。廊下で遠くに専務の姿を認識すればサッと身を隠すようになった。

しかし、その恥ずかしい出来事があった数日後、私が一人残業をしていると突然いるはずもない経理課に専務が現れたのだ。

“お客さんから頂いたものなんだけど
一人では食べ切れないから一緒にどうかな...?”

そう言ってケーキの箱を掲げてみせる専務に断る理由がなかった。
そして二人でケーキを食べながら
他愛のない話をする。
無口だと思っていた彼は想像してたよりも
饒舌で話し下手な私は彼の話しに嬉々として耳を傾けた。

それからというもの
彼は私が一人残業していると
いつも差し入れを入れてくれるようになった。
きっと喘息持ちの私が一人で残業していて
また発作でも起きたらと優しい彼は気遣ってくれていたのかもしれない。


そんな王子様にはきっとすでに素敵な彼女がいるのだろうと思っていた私はその時彼が自分に好意を向けていたなんて、彼から教えてもらうまで想像だにしていなかった。

いくら私が恋をしても
彼と私では住む世界が違う。

そうは思っていてもいつもはクールな彼が
ふと見せる柔らかい瞳に見つめられる度に私の胸はいつもトクトクと高鳴っていた。