それから竜海さんと
何度か時間や場所など
メールの連絡をやりとりして
あっという間に約束の日曜日はやってきた。

約束の時間に家の前に立つ私は
緊張した面持ちで竜海の車が来るのを待っていた。
当然、竜海さんと出掛けることは父や母には
伝えていない。変に期待を持たせてしまったらいけないからだ。

約束の時間の5分前に竜海さんの乗る
黒のBMWが家の前で停まった。


助手席側のドアが自動でおりて
「おはよう」と運転席から
竜海さんが笑顔で投げ掛けてきた。


「おはようございます」

私はぎこちなく頭を下げる。

「乗って」と言う竜海さんに
「はい」と返事をしたものの、
その場でどうしようかと戸惑った。

これはどっちに座れば良いのだろう?
今は彼女でもなければ妻でもない。
助手席に乗るのはおこがましいのかな..?
しかし、後部座席というのも変だし...

私が戸惑っていると
その様子見ていた竜海さんが
「桜良の席は助手席だろ?」とくすりと笑いながら言った。

「あ、そうですね、はい..」

私は心の中を見透かされた羞恥から
急いで助手席に乗り込んだ。

二人きりの車内に私は
緊張しながらシートベルトを締めると
竜海さんがゆっくり車を発進させた。