それから先に食べ終えた桜良と禅くんは
ここは奢ると言った竜海にお礼を言って
店を出て行った。

店を出て仲良さそうに話しながら
会社へと歩く二人を俺はガラス越しに
見送る。

「ほんとに、
なんでそんなに好きなのに
別れちゃったわけ?」

黒木がアイスティーの氷をストローでつつきながら、二人の後ろ姿を目で追う俺に向かって問い掛けた。  
 
俺は少し考えてから、観念したように
口を開いた。

「桜良から離婚してほしいと言われたとき、嫌だと応じないこともできたのにそれをしなかったのは自信がなかったからなんだ..
俺は桜良に本当に信頼されているのかって..
桜良の隠し事を知ったときの
怯えた表情が俺に向けたあの表情が
なんだか信頼されてないような気持ちになって悲しかったんだ..
別にそんなこと一つで嫌いになんかなるわけないのに. . .」

俺の言葉に黒木ははあっと思い切りため息をついた。

「あのなぁ、竜海。
信頼関係っていうのは、そんな一年やそこら付き合っただけで築けるものじゃないんだぞ?何年も何十年もかけて築きあげるものなんだ。俺だって今の奥さんと結婚して5年になるけどまだよく分かんねえとこ沢山あるし。すぐに全てを分かり合って信じ合おうなんて無理なんだよ。
お前の理想を桜良ちゃんに押し付けるなよ。
桜良ちゃんが可哀想だ。」

いつになく黒木が厳しく叱責した。

黙ってそれを聞いていた俺は
「あぁ~~、黒木に諭されるのは癪だが、
お前の言うとおりだ。」
額に手を当て項垂れた。