それから、修学旅行で連絡先を交換した
僕達は、たまに二人でご飯を食べに行ったり
するようになった。

桜良ちゃんから遊びに誘われることはなくていつも僕から『桜良ちゃん、ご飯食べに行かない?』とお誘いのメールを送っていた。

別の女の子と一緒にいても
桜良ちゃんからメールの返信が
あったら、「ごめん!急用ができた!」
と、その子そっちのけで
桜良ちゃんに会いに行った。


桜良ちゃんといる時はなんだか
心地よくてその時間は
優しいそよ風のように過ぎていく。

一度、女の子から“禅ってほんとタラシだよね。皆それに引っ掛かって不幸になるのよ”
と言われて落ち込んだ時があった。

すると、落ち込んでる僕に桜良ちゃんは
“禅ちゃんはタラシはタラシでも、人たらしなんだよ。人の心を掴むのが上手くて、不思議と皆、禅ちゃんに引き付けられちゃうんだよ。私はそれがとっても羨ましい。それに禅ちゃんと友達になって私は幸せだよ”
そう励ましてくれたんだ。

その言葉は僕の人生の中で一番嬉しい言葉だった。

それから桜良ちゃんは大学に進学して
僕はバーテンダーとして今の店で働き始めた。

それぞれ別の道に進んだけど、桜良ちゃんは大学に進学してからも僕のお店に度々友達と来てくれるようになった。

だけど、桜良ちゃんの友達が増えて
楽しそうにしているのを見ると
嬉しいのと同時に少し寂しかった。

独り占めしていた玩具を取られたような
そんな気分だった。

その寂しさを埋めるように
他の女の子と遊ぶけど
その寂しさが埋まることはない。

そして、桜良ちゃんが就職をすると
益々、僕と桜良ちゃんの距離は離れていった。

ある時、なかなか店に来てくれなくなった
桜良ちゃんに『たまには次の休みの日にでもご飯食べにいかない?』とメールを送ったのだ。

『禅ちゃん、ごめんなさい。実は彼氏ができて休みの日は約束してるの。また今度仕事早く終わったときにでもお店に飲みにいくね。』

桜良ちゃんから返ってきたそのメールに僕は心臓を刺されたような痛みが走った。


そうか。

僕は桜良ちゃんのことが好きだったんだ。

だけど気づいたときには遅かった。