「桜良...?」

私の涙を見て、竜海さんが心配そうに顔を覗き込む。

「フフッ。うれし涙です」

私は笑いながら、頬に伝う涙を拭った。

私の言葉に竜海さんはホッと顔を緩ませると
再び桜の木を見上げた。

「桜良...
来年もまた一緒にこの桜の木を見に来ような」

「竜海さん...来年は、もう一人増えてますよ...」


私の言葉に竜海さんは「えっ?」とびっくりした様子で視線をよこした。

「妊娠7週目です」

私は自分のお腹を擦ってみせた。

「桜良、それほんとッ?!」

竜海さんの言葉に私は目を細めながらコクコクと頷いた。

竜海さんは「やったあ!!」と興奮したように
叫ぶと私をギュッと自分の胸に抱き寄せた。

そして「これからは二人まとめて俺が幸せにするから」と囁くように言った。

私は抱きしめながら竜海さんの胸の中でコクコクと頷いた。

私の胸はキュッと幸せに高鳴る。

その一言で、私もお腹の子ももうすでに竜海さんから幸せを貰っているのだ。

抱き締め合う私たちの上を、桜の花びらが優しく降り注ぐ。


『あなたに愛されて私はとても幸せです』

私は温かい彼の胸に抱きしめながら、心の中でそう呟いた。



                         fin