「た、竜海さんっ、これはっ」

「これは一度、桜良の手を離してしまったお詫びだよ。」

「でもッ。」

お詫びにしては高すぎるのではと戸惑ってしまう。

「結婚指輪を二つ嵌めてる夫婦なんて早々いないだろ?」

竜海さんはおどけたような口ぶりで言った。

「ふふッ。ありがとうございます。大切にします」

私は左手を天に向かって掲げて見た。

舞い散る桜吹雪の中で、二つのダイヤがキラキラと輝く。

ああ、こんなに幸せでよいのだろうか...。

以前の私だったら、この幸せがいつ崩れるのだろうと
不安に駆られるときもあっただろう。

でも、今は不安になるよりも先に
私が彼を幸せにしたいという思いで一杯になってしまう

こんなにも、幸せな気持ちにしてくれる彼に
今度は私が幸せを与えていきたい。

もしかしたら、自信というものは誰かの幸せを願うことで
生まれてくるものではないだろうか。

二つの指を見つめながら、私の頬に一粒の涙が零れ落ちた。