side竜海

俺はあの事件があった次の月曜日の朝、
出社するとすぐに松谷を内線電話で呼びつけた。

コンコンと副社長室のドアがノックされ
「失礼します」と松谷が入ってきた。

「おはようございます。
何か急ぎの仕事でしょうか?」

小首を傾げる松谷の様子に
まだ事件のことは耳に入っていないのだと悟る。

「松谷、君はこの男を知っているかな?」

俺は机の上に宇佐美の写真を置いた。

松谷は写真を覗き込むや否や、顔が青ざめた。

しかし、動揺を隠すように笑顔を向けると
「いえ、初めて見る人です。取引先の人ですか?」
そう言って、とぼけた態度を見せる。

何としてでも白を切るつもりだな...

俺は「じゃあ、この写真を見ても知らないと言えるのかな?」
松谷と宇佐美の密会現場をおさめた写真を松谷の前に掲げた。