Restart〜二度目の恋もきみと

私は震える手を必死に抑えながら
翠たちの元へと歩みを進めた。

「桜良ちゃん、あの男の人、知り合い?」

私が席に戻ると、禅ちゃんが
会計中の男を不審げに一瞥しながら問いかけてきた。

「ううん。知らない人だよ..」

「...そっか」

禅ちゃんは少し勘の鋭いところがある。
しかし、今この逃げ場のない状況で変に気づかれて揉めることになれば
翠や禅ちゃんに危害が加わることは確実だ。

私は恐る恐る横目で男のほうに視線を送ると
男は一瞬だけどちらりとこちらに鋭い視線を向けた。
まるで余計なことは言うなと念を押すようだった。
血の気が一気に引き、背中に嫌な汗が流れる。


「あッ、あのね。竜海さんからここに来るのに
道に迷ったって連絡が入ったから、私ちょっと出てくるね」

私はわざと男に聞こえるように少し大きな声で言う。

「えっ?そうなの?私も行こうか?」

翠もそう言って席を立とうとした。

「ううん!!大丈夫。すぐ近くみたいだから私一人で行ってくるよ!」

私は慌てて肩を掴んで翠を座らせた。

「そう?」

「うん。翠はここで待ってて。」

翠は「わかった」と再び席に着いた。

「じゃあ、行ってくる」

そして、私が店の外に出ると男もすぐに
店から出てきた。