しかし俺が電話を切ると、何やら向かいで食べていた東吾が
楽しそうにケタケタ笑っていた。

「なんだよ?鍋に毒でも入ってたか?」

俺はその笑いが俺に向けられていることを悟って
素っ気ない態度で問いかける。
東吾は目尻に溜まった涙を指で拭いながら
口を開いた。

「いや..そんな優しい顔した竜海を見たことなかったから...ククッ...」

そんなとこだろうと思った。
黒木のやつといい、どうやらこいつらは
俺をからかうのが好きなようだ。

「笑ってないで早く食えよ。
今からすぐにタクシー呼ぶから時間ないぞ」

俺がぶっきらぼうに答えると、すぐにスマートフォンで
登録してあるタクシー会社の電話番号を探し始めた。

東吾は「まじかよ」と呟くと、焦るあまり熱々の豆腐で
口の中に放り込んでしまい、悶絶している。

俺はざまあみろと横目でほくそ笑みながら
通話ボタンを押したのだった。