「桜良は悪くないよ。でも、やっぱり心配だから今から俺もそっちに行くよ。」

「でも..竜海さん、今日はお友達とお食事じゃ..」


「こっちは大丈夫だから気にしないで。」


「でも...」


「じゃあ、俺の連れもそっちに連れていくよ。それなら問題ないだろ?」

俺が受話器の向こうの桜良に問いかけていると先程まで呑気にモツ鍋に舌鼓を打っていた東吾が箸を止めてギョッとした顔を向けた。
そして、ゆっくり食べてる暇はないと悟って
急いで口に放り込んでいる。

すると桜良は『まあ、それでしたら..』と
首を縦に振ってくれた。

「あと1時間くらいで着くと思うから。
桜良は翠さんや禅くんから絶対に離れないで。
ちゃんと約束守れる?」

『守れますよっ』

桜良の子ども扱いされて拗ねたような声に
俺は受話器の向こうの桜良の膨れっ面を想像して
思わず「ハハッ」と笑ってしまう。

そして俺が「じゃあ、待っててね」と電話を切ろうといたら、桜良に『あッ、、竜海さんっ』と呼び止められた。

俺が「ん?」と聞き返すと、
桜良は『あ、あの..ありがとうございます..』と蚊のなくような声で呟くように言った。

俺は「うん。また後で」と口元が緩みそうになるのを堪えながら電話を切った。