Restart〜二度目の恋もきみと

「そんなの無理だよ．．」

私の瞳から涙がこみ上げてきて、
思わず俯くと涙が一粒地面に零れ落ちた。

竜海さんと出会う前の私なら、誰かのものに
なるなんて考えてもみなかったと思う。
だけど竜海さんと出会って、竜海さんとの仲が深まるたびに
私はどんどん欲張りになって彼ともっと一緒にいたいと
彼との未来を想像してやまなくなってしまったのだ。

いくら禅ちゃんの頼みでも、それだけは
受け入れることはできない。

私にとって竜海さんはすでになくてはならない存在になってしまっているのだ。

私はグスッと鼻をすすると
「ごめん。禅ちゃん、その頼みは受けることができない」
禅ちゃんに涙混じりの声で訴えた。

「そうだよね．．。
僕は何を馬鹿な事、言ってるんだろうな。」

禅ちゃんはハハっと笑顔を取り繕う。

「禅ちゃん．．」

「桜良ちゃん。今、僕が言ったこと全部忘れて。」

「えっ．．？」

「あッ、そうだ。
僕、お店の食材の買い出し
しないといけないんだった。
桜良ちゃんももう昼休み終わっちゃうよ？」

禅ちゃんは私に笑顔を向けながら言う。


「ぁ、うん．．」

「じゃあ、僕は行くね」

禅ちゃんは笑顔で言うと踵を返して走って行った。

その最後に私に向けた笑顔が苦しみを堪えて
無理矢理、気丈に振る舞っているように
私の目には映って私は苦しさにその場に長い間、立ち尽くしていた。