*
  * 
 ・・・うるさい。
 何回、思ったことだろう。
 身体は疲れていて、眠りたいのに。
 隣で騒音かと思うくらいのいびきをかいている太陽様にため息をついた。
 別々に暮らしているから知らなかった。
 太陽様のいびきがどれだけうるさいかということを今、知った。
 顔をしかめて、そっと起きる。
 空が白みはじめている。
 カーテンを引いて、外の様子を見て。
 お腹すいたなあと思った。

 眠たい目をこすって、音をたてないように身支度をして。
 そっとドアを開ける。
 太陽様のいびきで熟睡が出来なかった。
 あくびをしながら、部屋を出て階段を降りて。
 外に出てみる。
 ひんやりとした空気に身体をぶるりと震わせる。
 外に誰かいるのかと思いきや、誰もいない。
 パーティーとはいえ、護衛っているもんじゃないのか? と思いながら、
 昨日のパーティー会場まで行ってみたけど扉は閉まっていて中に入れない。
 誰も歩いていない。
 誰もいない。
「朝食ないのかなあ」
 ぐう…とお腹が鳴る。

 ため息をついて。
 目の前に広がる砂漠を眺めた。
 この近くに入国審査所がある…とか昨日誰かが言っているのを聞いた。
 この砂漠を乗り越えて突き進めば祖国に辿り着くのかな。

 考えてみると、この国に来てから帰りたいと思ったことは一度だってない。
 昨日、サクラ様と話していて気づいた。
 ホームシックにかかったことなんて、一度もないことに。
 人生、上手くいっていれば、今頃。私はかつての婚約者だったヒューゴと結婚して優雅に結婚生活を送っていたのだろうか。
 時々、嫌なことがあると。脳裏にヒューゴとあの女のことを思い出すこともあるけど。
 考えている暇なんてないくらい、ここでの生活はきっとしっくりきているのだと思う。

 さみしいとは思わない。
 悔しいとは思うかもしれないけど。

「そこで、何をしておられる?」

 低い声が聞こえて。
 振り返ると、背の高い騎士団の男が立っている。
 あ、メグミさんだと思ったが。
 様子が…おかしい?