(違う)


「こんなこともできないのかって顔で見られてもなぁ。人の気持ちも分からない奴に、そんなことを思われたくないというか……」


(違うわ)


 そんなこと一度だって思ったことは無い。それなのに、まるでそれが真実であるかのように語られて、わたくしは絶望に打ちひしがれる。自分が皆に嫌われていたのだと、その時になって初めて気づいた。


「いくら勉強や運動が出来ても、人の心が分からないようじゃ……ねぇ?」


 その言葉は、まるで鋭利な刃物のように、わたくしを深く切りつける。
 ジャンルカ殿下も同じことを言っていた。わたくしは彼の気持ちを理解しようとしなかった、と。人間失格の烙印を押されたような、そんな気分だった。


『人として一番大事なものを欠いているわたくしには何の価値もない』


 そう思うと、目の前が真っ暗になる。出口のない迷路に迷い込んだような心地だった。言葉が毒のように心と身体を蝕み、次第に反論する力すらも無くなっていく。心が彼等の言葉に同調していくのだ。