「聞かれました? あの噂」
「ジャンルカ殿下とディアーナ様が――――」
「ロサリア様が」


 貴族に必要な社交性と教養を身に着けるため、我が国では16歳から18歳までの子女が、王立学園に通うことを義務付けられている。わたくしは16歳、ジャンルカ殿下は18歳。学園に通う生徒たちと丁度同じ年齢だ。

 殿下から婚約破棄をされたのは昨日のことだというのに、朝学園に着くと、わたくしたちの噂は瞬く間に広まっていた。

 潜めていても、声というのは漏れ聞こえるもの。特に、自分の噂というのは、聞きたくないと思っていても、自然と聞こえてくるもののようだ。人々の視線が突き刺さり、身体中から血が噴き出るような心地がする。胸に何かが詰まったような気持ち悪さがわたくしを襲った。


「正直、ディアーナ様が王太子妃にならなくてホッとしたよ」


 そんな言葉が聞こえてくる。ドクンと大きく心臓が跳ねた。


「ご自分の優秀さを鼻にかけている感じがしますものね……明らかに私達のことを下に見ていますもの」