「久しぶりだな、ディアーナ」


 ジャンルカ殿下は真顔でそう口にした。わたくしは唖然としたまま、その場から一歩も動くことが出来ない。殿下に掴まれたままの腕が、強く痛んだ。


「ど……どうして…………」


 言いながら声が震えてしまう。今後自分に関わるなと言ったのは、ジャンルカ殿下の方だ。


(それなのに、わたくしに声を掛けてくるなんて)


 彼の目的が分からず、わたくしは立ち竦むことしかできない。婚約を破棄された時の記憶が鮮明に蘇り、胸が強く痛んだ。


「君に用事がある。大事な用だ」


 そう言ってジャンルカ殿下は、わたくしのことを冷たく見下ろした。憎しみの見え隠れするグレイの瞳に、心が凍り付くような心地を覚える。彼はわたくしの顎を掬うと、小さくため息を吐いた。


「ディアーナ……僕ともう一度、婚約してほしい」

「…………え?」


 その瞬間、わたくしは大きく目を見開いた。