「夜会のパートナー……ですか?」

「うん。ディアーナにお願いしたいと思って」


 それは、ロサリア様がクラスメイトになって、数日後のことだった。サムエレ殿下はそっと首を傾げつつ、わたくしのことを見つめている。


「――――本当に、わたくしで良いのですか?」


 サムエレ殿下のパートナーになりたい令嬢は幾らでもいる。十四歳でわたくしという婚約者ができたジャンルカ殿下と違って、彼には未だ婚約者がいない。そのやんごとなき身分もさることながら、神に愛された美しい顔、恵まれた体躯、文武両道で、尚且つ穏やかで優しい気性を持った彼は、令嬢たちの憧れの的だった。


「もちろん。ディアーナが良いからお願いしているんだよ」


 そう言ってサムエレ殿下はクスクス笑う。胸のあたりがむず痒い。頬が自然と熱を帯びた。

 これまで夜会には、ジャンルカ殿下と一緒に出席していた。婚約者だったのだから当たり前だけど、思えば殿下はわたくしを誘う度、嫌そうな表情をしていた気がする。


(サムエレ殿下がわたくしを誘ってくださるなんて……)


 何だかとてつもなく嬉しい。ついついにやけそうになる頬を押さえつつ、わたくしはサムエレ殿下をそっと覗き見た。