午前の授業を終え、なんとかお昼休みを迎えた。サムエレ殿下のお陰で陰口は止んだけれど、教室にも、学園の皆が集まるテラスにも居たくはなくて。人少なだろうと向かった裏庭で、わたくしは目を見張った。


(ジャンルカ殿下……)


 そこには、昨日迄わたくしの婚約者だったジャンルカ殿下と、新しく聖女になったロサリア様がいた。二人は穏やかに微笑み合い、ゆったりとした歩調で歩いている。


(殿下はあんな風に笑えるのね)


 眺めながら、わたくしの胸がかつて無い程に痛む。

 わたくしは、殿下に歩調を合わせて貰ったことも、肩を抱かれたことも無い。まるで腫れ物を扱うかのように、殿下はわたくしとの距離を取るようにしていたし、必要以上に言葉を交わさないようにしていた。


(殿下はずっとずっと、わたくしとの婚約を破棄したかったんだ……)


 昨日今日の思い付きではない。彼はいつかわたくしとの婚約を破棄をするために、必要以上にわたくしと関わらないようにしていたのだと、今更ながら思い知った。