でも、これだけは伝えなくちゃ。


こんなにもナナちゃんはお母さんに愛されていたこと。

これから先も、この手紙がナナちゃんをずっとずっと支えつづけてくれること。



「僕も…七兎の言うとおりだと思う部分もあったんだ。病院にいれば、もう少し一緒に居られたんじゃないか、…って」



写真のなかで笑う女性の頬を、震える親指で撫でたおじさん。



「でもこれが、小百合が望んだ最期だったから……夫としても叶えてやりたかった」



たくさん、してあげたいことがあっただろう。

そこに写る女性は、息子ともっとたくさん一緒に居たかったはずだ。

息子の成長をそばで見て、肌で感じて、母親らしいことをひとつひとつ。


でも、最期の最後は息子と夫の隣にいることを自分で選んだ女性を、私は不幸な人だなんて思えなかった。


だってこんなにも幸せそうに笑っているんだから。

そして、こんなにもたくさんの言葉を、未来の息子に残しているんだから。



「私とお母さんがここに初めて来て、初めてみんなでご飯を食べたとき。
おじさん、なんて言ってくれたか覚えてる…?」