お母さんはこんな温かさで、こんな匂いをしていたんだって、思い出した。
もう17歳だし、ナナちゃんも見ているのに気にせず私を抱きしめてくれるお母さん。
「ありがとうは、お母さんのセリフよ」
じわっと浮かんだ涙を隠すように母親の胸に顔を埋めた。
小さな頃に求めていたものが、今になって少しずつ与えられているみたい。
遅くなんかない。
気持ちさえ通じあえば、いつでも繋がることができるから。
「あ、次ゆらが見たいって言ってたアーティスト出るって」
「…うん」
近い…。
それに、当たり前のように名前で呼んでくる。
もう“あんた”とは呼ばれなくなって、私が気になっていたテレビ番組を一緒に見てくれて、ソファーに並んだ肩をぶつけてくるナナちゃん。
「今日はゆらが先に風呂入っていいよ」
「え…、いいよ、ナナちゃん入って」
「熱すぎるのも駄目なんだよ俺。だから2番目くらいがちょうどいい」
「じゃあ…、お母さんかおじさんに入ってもらおう」
「……優しいよな、ほんと」



