「でももし、本当に戸籍上も家族にしたいってあんたが望むなら…俺は、…もういっこのほうの“家族”がいい」
それが俺がゆらと望む、“家族”だ。
お互いの左手薬指に指輪をはめるほうの。
……とか言ってたらなんか、俺ってそんなこと言うキャラでもねーし、いろいろ展開はやすぎじゃね?って、急激に羞恥心が襲ってきた。
「………は?こいつふざけてんだろ」
寝てんだけど。
すやすや心地よさそうな寝息しか立ってねえんだけど。
どっから寝てた……?
この様子だと確実に後半は聞いてないよな。
「てか地震は?怖くないの?おい、能天気女」
俺の腕のなか、さっきまでの地震の怖さは打ち消されたかのような寝顔。
目の下に少しクマがあるから、俺とのことで悩んで寝不足ぎみだったんだろう。
「……ナナ……ちゃ……、」
「…なんだよ」
小さくつぶやかれた寝言に返事をしてみる。
「─────…さみ……しい……」
それまで過ごしていた町を出て、この町に引っ越してきて、高校2年生から新しい学校に転校して。



