本当は違うって分かっていた。
それは母親が選んだ道だってこと、誰よりも俺のことを考えて生きていた女性なんだ。
最期は愛する旦那と息子のそばで過ごしたい、せめて最期くらいは母親でいてあげたい───、
きっとそう願ったんだろうって、本当は分かっていた。
誰よりも俺にまっすぐな愛情を捧げてくれたのが母さんなのだから。
「父さんとはそれから面と向かって会話することすら避けてて、謝るタイミングを逃しつづけて今だよ」
でも、ゆらが来てから変わった。
あんなふうに一緒のテーブルを囲んでちゃんと食事を取るなんてこと、実は数年ぶりだった。
もしかしたら近いうち、ちゃんと父さんと改めて話すことができるかもしれない。
そう思えるようにしてくれたのだって、ゆらなんだよ。
「だからそんな存在をさ、…他の男にやるとか……無理なんだって」
俺をずっと見てるんだろ。
雑誌を家宝にして、そこに載った俺を毎日眺めるんだろ。
家族だっていろんな形がある。
確かに俺たちは親同士が再婚したかもだけど、結局はそれぞれの連れ子でしかない。
戸籍上も“本当の家族・姉弟”ではないから、法律上だって別に問題はない。



