俺は大きすぎる我慢がひとつふたつ、ボカンボカンと時間を空けて発症するパターンだった人間で。

でもこいつは、小さな我慢が100個くらい常に起きているパターンなんだ。



「いろいろ頑張りすぎ。俺のためだけ取っても、何個我慢して頑張った?」


「…私がしたくてやってるんだよ」


「だとしても。本当ならワンピース着れたし、髪だって切る必要なかっただろ」



あんなブサイクな現役女子高生モデルとやらに馬鹿にされなくて済んだんだ。


俺だって“似合ってない”って何回も言ったけど、それはまったく違う意味で言ってたんだよ。

だからあのブスに馬鹿にされたときは、さすがに黙ってられなかった。


俺のためにこんなにも頑張ってるゆらは、どっからどう見ても可愛くて仕方ねえだろ。


って、ある意味そのときに気づかされたんだ。



「俺がいちばん大嫌いな人間は、父さん」



こいつは俺に嘘をついて裏切ったりはしない。

そう思えるからこそ、言った。



「母さんは癌(がん)の末期だった。だから…退院させた父さんが母さんを殺したんだって、ずっと思ってきた」