「頼むから泣き止んで、…ゆら」
「…いや、」
「なにしたら泣き止む?俺の冷凍パスタ食う?」
「…それは…君の好物だから」
だから“君”じゃなくて俺は“ナナちゃん”だろ。
なんだよ“君”って。
もっとよそよそしくなってどーすんの。
“ナナちゃん”なんて最初はふざけたあだ名だと思ったけど、今はそうじゃないとしっくりこない。
それでいて、この人しか許せないあだ名だ。
「あ、そういや俺、うまそうなスイーツ買ってきた。それ最初からあんたにあげるつもりだったし、あとで食べて」
「あ、ありがとう…、でも、そうじゃなくて、」
「そうじゃなくて?」
どんなことだとしても聞ける気がした。
たとえば、この人に“中学時代に付き合っていた女とはもう2度と関わりを持つな”と言われたなら、俺は迷いなくそのとおりするんだろう。
な?わかるだろ?
こんなの、家族だからとか、姉弟だからとかじゃないんだよ。
「わ、……ワサビ」
「……は?」
「あの、お寿司たべてて…、ワサビがね…?ツーンって、」
「………」



