「うん、お迎え呼ぶ。でも遥真くんもあまり無理しちゃダメだよ?」
「おう。ありがとう」
無理だよ、そんなこと言ったって。
あのひとは無理するに決まってる。
誰かの前ではいつも笑顔を見せているけど、中塚というマネージャーが姿を消した途端に焦ったように歯を噛んでいた。
そんな顔が見たかったんだ、ウチは。
「甲斐田先輩」
「───っ!…丸井、おまえなんで、」
静かに背中から声をかけると、ビクッと反応した。
いちばん見られたくない人間に見られてしまったかのような顔をされては。
「遅くなってすみません。いろいろ…バタバタしてて」
「いや、…優勝したんだってな。おめでとう」
ほら、思ったとおりだ。
こんなこと言われるとウチが言わせたみたいになる。
言わなくていいんだよ、“おめでとう”なんか。
悔しいくせに、本当は誰よりも誰よりも悔しがっているくせに。
「……うれしくないですよ」
「はは、俺がこんな姿だもんな」
「はい。なんで…怪我してるんですか、優勝するって、約束してくれたじゃないですか…、」
「…ああ、ごめん」



