お姉ちゃんになった私は、毒舌クール義弟を手懐けたいので。





頑張ることが増えちゃうんだから、仕方ないよ。

新しいものが追加されるたびに、私は我慢することが増えて、責任を勝手に背負ってしまうんだから。


だからナナちゃんは少し間違ってる。

いつも自分の気持ちを頑張ってねじ伏せているのは、私なんだよ。



「俺があのとき雑誌のデート撮影にあんたを選んだのは───…家族だとは思ってないからだよ」



頼られていたわけじゃなかった。

私だけには心を開いてくれたなんて、そんなことなかった。


あの笑顔は私だけに見せてくれたもので、私しか知らない顔で、私だけはナナちゃんにとって特別で、とか。


そんなのぜんぶぜんぶ、私が勝手にしていた勘違いだった。


好意を寄せられるなんてあろうことか、お姉ちゃんにも、お兄ちゃんにも、家族にすら思ってもらえないんだ私は。



「…そっか、わかった。ごめんね“七兎くん”」


「は…?おいゆら、」



クッキーをそっと手に持たせて、呼び止められた名前に振り向くこともせず階段を下りた───。