大丈夫、だいじょうぶ。
お父さんがいなくても寂しくないよ。
わたしがお父さんのぶんまでお母さんを笑顔にして守ってあげるから───!
小さい頃から口癖のように言っていたっけ、そんなこと。
どうしていま思い出すんだろう。
ああそっか。
なんか、そのときと気持ちが似てるんだ。
「とくに最近はいろんな人から“お姉さん”って言われて照れちゃうなあ。
でもそれって、私はちゃんとナナちゃんのお姉ちゃんになれてるってことだ───」
ダン───ッ!!
「っ…!」
気づけば壁に追いやられている身体、なにかを覚まさせるかのように乱暴に壁につかれた手。
「お、お姉ちゃんにそんなこと…しちゃダメだよナナちゃん」
「気持ち悪いんだけど。お姉ちゃんお姉ちゃんって、あんたがいつ俺の姉貴になったんだよ」
「いつ、って……ここに来たとき、」
「俺は最初から勘違いすんなって言ってただろ。…お前もあいつと一緒で勘違い女とか、うぜえんだけど」
あいつと一緒で、とか。
そういうこと言うのやめてよ、よくないよ。
誰と比べているの。
顔だって声だって、ぜんぜん似てないでしょ…?



