「…わかった。ぜったい渡すね」
「ありがとうございます…!」
家族でしかない私と、彼女だった佳純ちゃん。
まさかこんなにも大きな壁があったなんて驚いた。
いい子だよ、すごくいい子。
あんなにも冷たく「帰れ」なんて言われたのに、こうしてクッキーを作ってきてくれて。
食べてくれなかった場合は私が食べていい、なんて健気に言ってくれる。
そうなったら私の立ち位置なんて確定してるよね。
ふたりの背中を押す、お姉ちゃんにならなくちゃ───…。
「あっ、ナナちゃん!ちょうどいいところにいた」
「……なに」
面と向かって会話を交えたの、あの日以来だ。
あれからお互いにどこか避けてしまっていて、よそよそしくて。
ちょうど階段を上がったところで鉢合わせたタイミング、私は今までどおりの笑顔を作った。
「これ、佳純ちゃんから」
「……捨てといて」
「えっ、それはひどいよ…!受け取ってくれなかった場合は私が食べていいって言ってくれたから、お姉ちゃん的には嬉しいけどね?」



