ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 乱暴な口調とその迫力に瑠奈は圧倒されてしまったものの、律は慣れた様子で「悪かった」と謝った。

 不服そうな表情ながら、ヨルは舌打ちして彼を離す。

 頭を悩ませる冬真は我関せずの態度で、再び夜空を仰いだ。

 やはり琴音が万全の状態では、瞬間移動させられて終わりだろう。

 大雅たちがしたように、異能を連続で使わせて無理やり疲弊させたところを狙うのが最善だ。
 けれど、もう同じ手は通用しない。

(僕の顔も知られちゃったしなぁ……)

 そのとき、はたと思いついた。そういえば────。

 高架下で相(まみ)えたとき、右手を封じられた彼女はなす術なくやられようとしていた。

 思い至ると、興がるように口端を持ち上げる。

(そっちの弱点の方がよっぽど(もろ)い)

 ゆったりと立ち上がった冬真は、律に触れて傀儡にする。

「瑠奈。瀬名琴音と会うんだ」

 思わぬ言葉に「へ!?」と素っ頓狂(とんきょう)な声が出た。
 何を言い出すのだろう。“死ね”と言われたも同然だ。

「無理無理無理! 会った瞬間────」

「殺されない」

 先んじて冬真は断言する。

「何かは分からないけど、瀬名琴音やその仲間たちには、僕らを殺せない理由がある」

「た、確かにそうかもしれないけど……」

「そして、あの子の異能を封じる方法が分かった。きみにはそれができる」

「えっ!?」

 そのやり取りを耳に大雅は眉を寄せた。……まずい。

 瞬間移動の発動条件は、利き手で対象に触れること────冬真にはどうやらそこまでバレてしまったようだ。

「瀬名琴音の右手を石化するんだ。そうすれば、あの子は能力を使えない」

 瑠奈は高架下での出来事を思い出した。

 琴音にそんな弱点もあったなんて、とほくそ笑む。
 すっかり自信が舞い戻ってくる。

「……分かった」

 当然、右手だけで済ますつもりはなかった。全身を石化して砕いてやる。



 解散して帰路につくと、大雅は振り返る。
 少し後ろを瑠奈と律がそれぞれ歩いていた。

 既に校舎からは離れていて、冬真の目もここまでは届かないだろう。
 素早く引き返して律の前で足を止めた。

「何だ」