ぽつぽつと各々会話を交わしたり、軽く眠ったりしながら夜明けを待つと、次第に空が白み始めた。

「う……」

 琴音は小さく呻き、うっすらと目を開ける。

 いきなり見慣れない光景が視界に飛び込んできて、困惑しつつ身を起こした。

 周囲を見回す。仲間たちの姿があったが、小春や蓮、アリスは眠っていた。

「気が付いた? 大丈夫?」

 奏汰に声をかけられ、琴音は頷く。

「ええ……、もう平気」

 そう答えると、昨晩の記憶が徐々に蘇ってきた。

 操られた大雅の策略に嵌り、瑠奈に襲われたところに小春が現れ────どうなったのだろう。

「水無瀬さんは大丈夫なの? 桐生と瑠奈は……」

「大丈夫、小春ちゃんは君を連れて逃げて来てくれた。桐生くんたちはそこで拘束してるよ。望月くんの魔法で気絶してる」

 奏汰が指した方を見やれば、大雅と瑠奈の姿があった。確かに気を失っているらしく、動く気配はない。

「そう……。私のせいでごめんなさい」

「謝る必要はないよ、仲間なんだから。それより、お礼なら小春ちゃんに言ってね」

 奏汰の言葉に琴音は再び小春を見やった。

 あのとき彼女が来てくれなければ、自分は今頃冷たい石と化していたに違いない。

「ええ、そうするわ。……ところで望月は?」

「ここだ」

 その声に振り返ると、慧がビニール袋片手に歩いてくるところだった。

 奏汰が「おかえり」と声をかける。コンビニへ行っていたようだ。

「もう平気か?」

「平気よ。ありがとう」

 慧に差し出されたあたたかいココアを受け取る。彼は、奏汰にはカフェオレを渡していた。



 完全な夜明けを迎えた。朝日が降り注ぐ。

 大雅と瑠奈を除いた全員が目覚めると、仔細を聞いた琴音は小春に向き直った。

「────助けてくれてありがとう、小春」

 それを受けた小春は、はっとした。

 初めて琴音に名前で呼ばれた。

 小さく微笑んた琴音の眼差しは柔らかく、以前よりも距離が近づいたことを実感する。

 嬉しくなった小春は顔を綻ばせた。

「ううん、無事で良かった」

 それから琴音は、目を閉じている瑠奈に視線をやる。

 一転して険しく厳しい表情を浮かべた。

「瑠奈を飛ばすわ。何処か遠くへ」

 戻って来られないくらいの僻地や危険地帯へ飛ばしてしまえば、もう瑠奈は妙な真似を出来なくなるだろう。脅威でもなくなる。

「待て、やめておけ」

 しかし、あろうことか慧が制止した。

「どうして?」

手下(、、)がいなくなれば、今度は如月本人が出てくるかもしれない」

 そうなれば、操られるのは大雅だけでは済まない。

 最悪の場合、ここにいる全員が否応なく琴音の命を狙う羽目になるかもしれない。

「……けど、どうすればいいんだろうな」

 途方に暮れたように呟いた蓮に、小春も同調する。