ホームルームが終わると、和泉を案ずる声や事件性を疑う声で教室が埋め尽くされた。
小春も驚いてしまった。昨日の放課後、いつも通り挨拶を交わしたのに。
“また明日”と言っていたということは、自らの意思で姿を消したわけではないのかもしれない。
そんなことを思いながらも、心配になってスマホを取り出した。
【大丈夫? 何かあったの?】
和泉にメッセージを送っておく。
彼が消息を絶ったことを、嫌でもゲームと結びつけてしまう。
かぶりを振って無事を願った。
昼休みになると、蓮についていく形で立ち入り禁止の屋上へ出た。
くまなく周囲を確かめ、ほかに人がいないことが分かると、フェンスに背を預けつつ地面に腰を下ろす。
少し間を空け、小春もその隣に座った。
蓮はパックのジュースにストローを挿しながら口を開く。
「マジで現実味のねぇ話だけど、俺たちは“魔術師”とかいうもんに選ばれたんだ」
「それって何なの? どういうことなの?」
「異能力者になるんだ。あのメッセージを受け取ったら強制的にアプリを入れられて、ウィザードゲームのプレイヤーになる」
そこまでの流れは小春も、納得はともかく理解はできた。身をもって経験したからだ。
けれど、まず前提として────。
「異能力なんて使えるの……?」
自分たちは平凡な高校生、ただの人間だ。異能や魔法なんて使えるはずがない。
そもそもそんなファンタジーなものが現実に存在するのかどうかも怪しい。
にわかには信じられなかった。
「使える」
けれど、蓮は端的に断言する。
「あのアプリ開いてみたか?」
「う、うん……」
「ガチャってあったろ。あれを回せば異能を得られるんだよ。自分の“何か”と引き換えに」
小春は“必要消費アイテム”という部分に書かれていた文言を思い出した。
四肢や内臓といったあれらは、異能力を会得するための“代償”だったのだ。



