「けど、やるしかねぇよ。無謀でも、何もできず犬死になんてしたくねぇからな」
蓮はためらうことなく小春の主張に賛成した。
彼女の言葉だからという理由だけでなく、その意見には大いに同意できる。
それに、理不尽を強いてくる身勝手な運営には、一矢報いなければ気が済まない。
「うん、俺も賛成。きっとどこかには同じことを考えてる魔術師がいると思うし、仲間がいれば倒せる可能性はあると思う」
奏汰は右手を挙げつつそう言った。
真剣な表情をたたえていた琴音は、やがて「そうね」と呟く。
「簡単じゃないでしょうけど、だからって諦めたら負けだわ。自分勝手な運営に屈するのは癪ね」
それぞれの出した結論を聞き、アリスは吟味するように黙り込んだ。
運営を倒すなんて、どう考えても現実的ではない。
現状、運営に関する情報は何もない。
けれど、12月4日という期日は着々と迫ってきている。
情報屋を名乗るアリスでも、さすがに魔術師全員をもれなく把握できているわけではないため、慧の言葉には揺れてしまう。
無茶だとは思うものの、人数がいれば、協力し合えれば、確かに運営側を倒すことにも希望があるかもしれない。
「あーもう、分かった! あたしも賛成するわ。こうなったら絶対に運営側を倒す」
半ば自棄になったように言ったものの、投げやりになったわけではなかった。
迫るタイムリミットへの焦りから愚かな選択をしているとしても、それが正解だと信じて動くしか、アリスにはないように思えた。
純粋に自分や仲間を守りたい小春とは異なっていても、この際目的は同じだ。
「ありがとう、みんな……」
小春は噛み締めるように告げた。
正直なところ、真っ向から拒絶されることも覚悟していたのに。
「そうなると、やることは大きくふたつね。魔術師の仲間を増やすこと。そして、運営についての情報を集めること」
琴音が2本の指を立てて言った。各々が同調するように頷く。
────そのうちに時刻は7時半を回った。
ひとまず登校時間が迫ってきている。
敵は何も運営側のみではないのだ。
少なくともいまは、普段通りを心がけておかなければ。
「一旦帰らないとだね」
「あいつらはどうする?」
蓮は意識を失ったままの大雅と瑠奈を指し、誰にともなく尋ねた。
ふたりにかけられた術が解けるのは昼頃で、まだ時間はある。
ここに放置しておけば、目を覚ますなり縛られていても琴音を殺しに向かうかもしれない。
「僕が見張っておく」



