「……けど、どうすればいいんだろうな」
「大元の冬真くんをどうにかしないと、こんなことの繰り返しなんじゃないかな」
アリスも「うんうん」と頷く。
「まずは如月冬真を殺すしかなさそうやな」
「……それはだめ」
即座にそう言った小春に眉をひそめる。
「何や、まだ言うんか? 躊躇なく殺さんと、食われるのは自分やで。このゲームは、綺麗事じゃどうにもならん」
このゲームにおいて倫理観や理想は、生存のための判断を鈍らせる。
しかし、小春は首を左右に振った。
「ちがう、わたしが言いたいのはそういうことじゃなくて」
そういうことでもあるのだけれど、ただ殺しを非難したいわけじゃない。
「魔術師同士で殺し合ってる場合じゃないと思う」
ウィザードゲームのすべてを根幹から否定する言葉に、各々が怪訝そうな表情を浮かべた。
「何をいまさら……」
「このまま12月4日を迎えたら全員死ぬ。かと言って唯一の生き残りになろうとしたら、みんなのことを殺さなくちゃならないことになる。わたしだけ生き残っても……ほかにはもう誰もいない」
それぞれ、特に蓮は神妙な面持ちで、小春の紡ぐ言葉を聞いた。
「それは絶対に嫌。でも、何もできずにみんなが死んじゃうのも嫌。……だから」
「まさか────」
「そう……。わたしは、これを仕組んだ連中を倒したい。それだけが唯一、全員が助かる道だと思うから」
これまで考えなかった、というか、思いついても諦めていた可能性だ。
確実に人間ではない、得体の知れない運営を、敵として相手取るだなんて。
「あんた正気か……? そんなん無理に決まっとるやろ。こんな会話聞かれたら消されるで」
「だが、一理ある」
意外なことに、慧はこれにもまた賛同してくれた。
「このゲームには疑問点が多すぎる。規模やプレイヤー数もそうだな。通常は魔術師を見分ける術もないのに、唯一の生き残りになるなんて不可能だろ。全国規模なら? 世界規模なら? 倒しきれるわけがない」
現実的な話として、それはその通りだった。アリスも反論しない。
「とは言っても……運営の情報はほぼ皆無よ。調べても出てこないし」
霧の中にいる運営を暴き倒すのと、神出鬼没なプレイヤーを余さず倒しきるのと、どちらも相当に困難を極める気がする。



