「あーあ、あたしたちが殺したいのは琴音ちゃんだけなのに……。邪魔するつもりなら、きみたちも抹殺対象に入っちゃうよ?」
「うるせぇ。やれるもんならやってみろよ」
蓮は凄みながら返した。
瑠奈は怯まず、くすくすと笑いながらステッキを構える。
「おっけー、お望み通りにしてあげる」
ステッキをひと振りすると、先端から銃弾のような石が飛び出した。
勢いよく迫り来るそれを見定め、奏汰はとっさに氷の壁をバリアのように張る。
ガガガガッ! と石弾が氷壁にめり込んで煙が上がった。
「危ねぇ……。ナイス、奏汰」
「大丈夫。石化魔法って聞いてたけど、そんな技もあるんだ」
油断なく瑠奈を見やったとき、突如として視界に大雅が現れた。
「!」
胸ぐらを掴まれた奏汰は、その勢いに圧されたまま地面に倒れ込む。
上から押さえつけられている形になった。
「奏汰!」
蓮はとっさに炎を宿したものの、寸前で思い留まる。
大雅を傷つけるわけにはいかない。
「くっそ、やりにくい……」
そう呟いて駆け出すと、彼の上腕を掴んで引き剥がした。
すぐさまそれを振りほどいた大雅は、今度は蓮に手を伸ばす。
ガッ、と思いきり首を掴んで締める様子を見た小春は慌てて立ち上がった。
「大雅くん! やめて……!」
届かないと分かっていても、叫ばずにはいられない。
「たい、が……」
蓮は掠れた声を絞り出す。
それを受けた大雅は、首を絞められている蓮より苦しげに顔を歪めた。
駆け寄った慧が大雅の腕を剥がして突き飛ばす。
激しく咳き込む蓮を振り返った。
「何してる、向井! 殺されたいのか」
「なわけ……っ。でも、どうすればいいんだよ!」
下手に抗えば、傷つけてしまうかもしれない。
大雅にとってもこちらにとっても不本意な争いなのだ。
大雅は、実戦においては“無魔法”同然でも、素の力と喧嘩の強さがこの状況では災いしていた。
「ほんまに……どうしたらええねん。殺してええんか!?」
「だめ!」
気づけば、小春は声を張っていた。
ゲームに巻き込まれてから、日々胸の内に蓄積していた靄が爆発する。
「皆殺しとかバトルロワイヤルとか、そういう言葉に惑わされてるけど……わたしたちはみんな同じ立場。どんな理由があっても、殺しが正当化されるわけじゃない」



