ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 困惑しながらも手を引かれるがまま歩いた。
 見上げた横顔は先ほどのように蒼白で、ある直感がよぎる。

「まさか、あれもウィザードゲームと関係が────」

 ばっ、と突然手で口元を覆われた。反射的に言葉を切る。
 蓮は怖いくらいに真剣な表情をしていた。

迂闊(うかつ)に言わない方がいい。つか、言うな」

 何を、とは言われずとも分かった。
 小春は気圧(けお)されるような形で頷く。

「説明は昼休みにするから、とりあえず普段通りでいろよ」

「……分かった」



 教室へ入ると、蓮は男子の友だちの元へ向かった。

 なるほど談笑する姿はあまりに自然で、異様な出来事などすべて忘れてしまったかのようだった。

「おはよー、小春ちゃん」

 声をかけられて振り向くと、クラスメートの胡桃沢瑠奈(くるみざわるな)に笑顔を向けられる。

「あ、おはよ」

 いつも一緒に行動する、というほどではないけれど、ともに昼食をとったり、放課後に遊びに出かけたりしたこともある友だちだ。

「今日も蓮くんと一緒に来たの?」

 瑠奈はふわふわのツインテールを揺らしながら首を傾げる。
 苦く笑いつつ頷いた。

「うん、そうだよ」

「帰りも一緒なんでしょ? お陰で小春ちゃん、あたしと遊びにいけないんだけどー」

 文句を言うようにじとっと遠目から蓮を軽く睨んだ。当の本人は気づいていない。

「愛されてるのは分かるけど、大変だね……束縛彼氏は」

「彼氏じゃないってば。ただの腐れ縁だよ」

「えー、そう?」

「そうだよ。どうして毎日こうも一緒にいるのか……」

 瑠奈の誤解(というか、からかい)のお陰で、蓮にならって自然と普段通りに振る舞うことができていた。

 くすくすと楽しげに笑う彼女の、一瞬鋭くなった眼光に小春は気づかない。

「心当たりはないの?」

「えっ?」

「ほら、いつもとちがうことがあったとか」