瑠奈は改めて琴音の様子を思い出す。

 自分を拒絶しており、強い敵意を向けられた。もう何を言っても信用されないだろう。

 何とか仲間に引き入れたとしても、逆に瑠奈の安全が脅かされそうだ。

「無理だと思う。あたしのこと嫌ってるだろうし、向こうは向こうで仲間がいるって言ってたし」

 瑠奈がそう答えるまでに時間はかからなかった。

 冬真も冬真で特に期待はしておらず、さほど落胆はない。

「そっか、じゃあやっぱり正面から殺るしかないな。その子の仲間は何人いるって?」

 さらりと言われたが、探している理由が“殺すため”なのであれば、瑠奈にとっても都合がいい。

「詳しいことは分かんない。でも、その子含めて三人以上は確実だと思う」

 小春と蓮のことである。

 魔術師であることは把握しているが、何の魔法を使うかまでは分からず終いだった。

「よし、じゃあ俺が探りに行く」

 大雅が言った。

 いつものように、テレパシーで特定するのが一番早い。

 冬真とて自身の駒にするため、無用な犠牲は出したくないのが本音だった。

「分かった。じゃあ二人に任せるね」

 にこやかに頷いた冬真は、そこで律を解放した。

 我を取り戻した律の切れ長の目が瑠奈に向けられる。

「えっと……」

「話は聞いていた。傀儡状態でも意識はある」

 同じ人物から発せられていても、冬真の口調とあまりに違い、瑠奈はそういう意味でも少々戸惑った。

「改めて、俺は佐久間律だ」

「あ、胡桃沢瑠奈です……。よろしく」

 瑠奈が困惑気味に自己紹介を返すと、大雅は空になった容器を片手に立ち上がる。

「じゃあ、俺帰るから。瑠奈、明日の放課後行くからな」

「うん、分かった」

 大雅が帰った後、瑠奈は冬真たちと連絡先を交換しておいた。

 大雅とはテレパシーがあるため不要だ。

「…………」

 瑠奈は琴音たちの強気な態度を思い返す。

 もしかしたら、敵わないと思っていた琴音に一泡吹かせられるかもしれない。

 そう思うと、自然と笑みが込み上げた。