「強いなぁ、皆……。あたしなんか到底敵わない」

 思わず本音がこぼれる。

 例えば敵意を向けられても、勝ち筋が見えない。人数を差し引いても、どう足掻いても彼らの勝ちだ。

「その点はどーでもいいよ。戦うわけじゃねぇし」

「そう。僕らは瑠奈ちゃんと手を組みたいんだよ」

 石化魔法は実戦向けであり、名花高校生ということで諜報にも使えるのだ。

 冬真たちの魔法は確かに強力だが、どれもなかなか積極的な攻撃に転じるのが難しい魔法でもある。

 戦闘要員が増えた方が都合がいい。

「何で、あたしなの?」

「それは偶然だ。たまたま見かけたから、そんだけ」

 瑠奈はしかし、その偶然に心から感謝した。

 瑠奈としては心強い味方を得られる上に、これほど強い連中を敵に回さずに済むということで、願ってもみない展開だった。

「どうかな? 戦闘を女の子に担わせるのは心苦しいけど……」

「……ううん、分かった。こちらこそよろしくね」

 冬真の言葉に瑠奈が頷くと、彼は安堵したように顔を綻ばせた。

 大雅は特に何も言わず、相も変わらずポテトを頬張っている。

「実を言うともう一人、戦闘要員がいるにはいる。けど、ちょっと厄介な問題を抱えててさ……扱いづらいんだよね」

 困ったように苦笑しつつ、冬真は言った。

 瑠奈にはその問題とやらがまったく不明で、首を傾げてしまう。

「だから、瑠奈ちゃん。君を頼らせてね」

 しかし、冬真はそれ以上の説明を今する気はないらしく、さっさと話題を打ち切った。

「早速だけどさ、僕らはとある魔法を使える魔術師を探してるんだよね」

 僕ら、というか、主に冬真が、である。

「とある魔法?」

「硬直魔法、時間操作系の魔法、それから空間操作系の魔法。君の知り合いに誰かいたりしない?」

 瑠奈ははっとした。前二つは知らないが、空間操作系の魔術師ならよく知っている。

「いる……、いるよ! 空間操作系────瞬間移動の魔法少女!」

 前のめりになって言った。

 頭の中に琴音の冷たい表情と脅迫が過ぎり、思わず熱が入る。

「マジで?」

 大雅もこれには瞠目した。

 いきなりの思わぬ収穫に驚きつつも冬真は内心喜ぶ。

「ちなみにその子、仲間に出来そう?」

 友好的に声を掛けて応じてくれた方が、殺すときに容易いだろう。