ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


 聞けば、大雅の仲間である冬真が、時空間操作魔法と硬直魔法の魔術師を探しているそうだ。……殺すために。

 そして、硬直魔法を持っているのはほかでもない奏汰だ。
 蓮は眉をひそめる。

「時空間は強ぇから分かるとして、何で硬直も?」

「冬真の異能と相性がいいんだよ」

 傀儡魔法における“絶対服従の術”のトリガーは、大雅のテレパシー魔法と同様に“目を合わせること”なのだ。

 瑠奈の前では伏せていたものの、相手と5秒間目を合わせることにより発動できる。

 しかし、5秒が経過するまでは、目を逸らすなり暴れるなり物理的に回避することができてしまう。
 硬直魔法があれば、そういった抵抗をねじ伏せられるのだ。

「もしかして、硬直魔法の魔術師とも知り合いなのか?」

 直感的に思いついたことを口にすると、果たして蓮が頷いた。

「ああ……。おまえと同じ、星ヶ丘にいるぞ」

 一連の流れから大雅は信用に足ると判断し、こちら側の内情を打ち明けることにした。

 この場にいない慧や奏汰、陽斗、アリスのことも(あわ)せて伝えておく。

「奏汰には絶対その能力を使わせんなよ。持ってるってバレたらソッコー殺されるぞ」

「分かった、伝えとく」

 大雅の忠告に神妙に頷いた。まさか、冬真と同校同学年だったとは。
 とはいえ、ふたりに面識がないのが幸いだった。

「……大丈夫なの? 大雅くん」

 小春には現状、彼の身の安全が一番案じられた。
 命を狙われていると分かっている相手と、ともにいるつもりなのだろうか。

「平気。そんな急に取って食われたりしねぇよ、たぶんだけど」

 いっそのこと、この際きっぱり冬真たちとの繋がりを断ち、堂々とこちら側の仲間になると宣言した方が安全な気がする。

 それでも、大雅にその気はなかった。
 表面上は冬真の一味の一員として振る舞い続けるつもりだ。

「ま、俺の裏切りはそのうちバレる。でもしばらくはやり過ごせるはずだ。瑠奈は俺が一方的にやられたと思って、冬真にそう報告してるだろーから」

 いずれにしても、冬真には大雅の能力が必要だ。

 裏切りを悟ったら、殺すにしろ生かすにしろ大雅のことを取り返そうと躍起になるだろう。

 そのとき、小春たちの仲間だと露呈(ろてい)してしまうと、関係のない彼女らのことまで危険に晒してしまう。

 彼ら彼女らを盾にすることになる。
 危険なのは自身だけで十分だ。それ以外は巻き込めない。