琴音の名前や異能を言い当てた時点で、何らかの力を持っていることは推測できた。
テレパシーならば頷ける。
「おまえらのことは別に言わなくていい」
「え?」
「3秒だけ黙ってくれ」
大雅は小春、蓮と順に目を合わせた。
「水無瀬小春に向井蓮。……ふーん、飛行と火炎ね」
「すげぇな、テレパシーって。ぜんぶ分かるのか?」
「その気になればな」
小春ははたと気がつく。
魔術師を見分けられる異能とは、このテレパシー魔法のことなのだろう。
大雅は昨日瑠奈にしたのと同様の、能力についての説明を3人にもしておいた。
ひと通り聞き終えた琴音は、冷静そのものな態度で彼を見やる。
「……さて、そろそろ事情を話してもらおうかしら」
瑠奈とはどういう繋がりで、どんな意図でこちら側に接触してきたのだろう。
「おまえらに折り入って頼みがある」
「……何だ?」
「俺も、おまえたちの側に入れて欲しい」
思わず小春と蓮は顔を見合わせた。
「俺さ、いま基本的にふたりの魔術師と行動してんだ。そこに瑠奈ともうひとり、別の魔術師も一応仲間なんだけど」
訳ありで気まぐれなもうひとりのことは、あまり信用に値しないのだが。
その言葉に琴音は眉を寄せた。
「仲間がいるのに、わたしたちの仲間になりたいの?」
大雅は「ああ」と頷き、険しい表情を浮かべる。
「仲間っつっても、あいつらは俺を利用してるだけだ。欲しいのは俺の能力……。いつ殺されてもおかしくねぇ」
冬真に命を狙われていることなど、実際には百も承知だった。
それは異能によるものではなく、もともとの勘の鋭さの賜物である。
彼の探す魔術師が見つかる前に、うまく離れる機会をずっと窺っていた。
そして、冬真たちと対立を余儀なくされる“こちら側”は好都合で、この接触は願ってもみない好機だったのだ。
冬真には琴音の存在がバレてしまったけれど、まだ遅すぎるということはないだろう。
ゲームの性質上、いつか衝突することは避けられないとしても、利用された挙句に殺されるのではたまらない。
「大雅くんを利用して……その仲間たちは何をしようとしてるの?」
大方、魔術師襲撃のために見分けさせているのではないかと踏んで、小春は尋ねた。
「ある異能を持つ魔術師を探してる。そのうちのひとりはおまえだ、琴音」
「わたし?」



