「何となくもう察してるだろうけど、冬真は誰かを傀儡にしなきゃ会話できねぇ」
「うん、僕の代償は声なんだ。……いつも身体を貸してもらってる律には申し訳ないな」
冬真を眉を下げる。当然ながら、律自身は反応しない。
傀儡状態の彼に代わり、その能力は大雅が説明した。
「律の異能は“記憶操作魔法”。相手の頭に触れれば、その記憶を操作できる」
3人が3人とも、いかにも強力だ。
瑠奈はステッキを取り出す気なんてとっくに失っていた。
「任意の記憶を消したり、書き換えたりすることができるんだ。なくした記憶を蘇らせることはできねぇんだけどな」
使いようによっては、非常に有利な立場に立てるだろう。
記憶は、その人を構築している要なのだ。
それを失ったり、知らない間に書き換えられたりしたらと思うと身震いした。
もしかすると、冬真も同じなのかもしれない。
だからこそ律を頻繁に傀儡にし、上から押さえつけているとも考えられる。
「あと、律の異能には弱点がある。時間が経過したり、何かの出来事をきっかけに本来の記憶が戻ったりすることがあるんだ。記憶操作は完璧じゃねぇ」
大雅はそう締めくくった。
もちろん、その可能性が100パーセントでない以上、大いに恐るるに足るのだが。
「強いなぁ、みんな……。あたしなんか到底敵わない」
思わず本音がこぼれる。
仮に敵意を向けられても、勝ち筋が見えない。
人数を差し引いても、どうあがいたって彼らに軍配が上がる。
「それはどーでもいいよ。戦うわけじゃねぇし」
「そう。僕らは瑠奈ちゃんと手を組みたいんだよ」
石化魔法は実戦向けであり、名花高校生ということで諜報にも使えるのだ。
冬真たちの異能は確かに強力だけれど、どれもなかなか積極的な攻撃に転じるのが難しい能力でもある。
戦闘要員が増えた方が都合がいい。
「何で、あたしなの?」
「それは偶然だ。たまたま見かけたから、そんだけ」
その偶然に心から感謝した。
瑠奈としては心強い味方を得られる上に、これほど強い連中を敵に回さずに済むということで、願ってもみない展開だ。
「どうかな? 戦闘を女の子に担わせるのは心苦しいけど……」
「……ううん、分かった。こちらこそよろしくね」



