零時になった。日付が変わる。
その瞬間、びりっと身体に微量の電流が流れたような感覚がした。
画面にポップアップが表示される。
【オメデトウ!
キミには“飛行魔法”を授けるよ〜】
その軽い口調を見ると、自分の真剣さや緊張が滑稽にさえ思えてくる。
「飛行……?」
空を飛ぶということだろうか。
小春は先の文を追った。
【あなたの“寿命(5年分)”を消費しました。
魔法ガチャは23時59分に再度回せるようになります】
(寿命……)
小春は胸に手を当てた。ばくばくと心臓が早鐘を打っている。
現時点で身体的に何の変化も感じられないからか、あまり実感が湧かない。
しかし、どうやら即死は免れたようだ。
大きな山を超えたような気分になり、深々とため息をついた。ひとまず助かった。
「あれ……」
つぅ、と不意に鼻から血が垂れてきた。
慌てて拭い、ティッシュで押さえておく。
安堵したせいか、魔法やら代償やらの影響かは分からなかったが、鼻血はすぐに止まった。
大したことはなさそうだ。
「飛行って、どうやるんだろう?」
小春は蓮や他の魔術師たちが魔法を使っていたときのことを思い出す。
真似をして手を翳してみたが、何も起きない。首を傾げる。
事実、魔法を目にしている以上、今さら嘘やいたずらだったということもないだろうに。
(週が明けたら聞いてみよう)
そう思うと同時に、蓮への申し訳なさが募る。
魔法を得ても得なくても、ありがたく申し訳ない。
どちらを選んでも、自分のわがままを押し通した結果になる。
小春は心苦しさを覚えながら、眠りに就いた。