ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜


「ま、いいんじゃねぇか? 情報屋が味方なら心強いし。な?」

 蓮は小春を窺った。
 いつも、どんなときでも、彼は小春の意思を尊重してくれる。

「うん、アリスちゃんの安全も心配だし……」

 アリス自身が口にしたように、色々な情報を持っている彼女を疎ましく思う魔術師が、その命を狙うかもしれない。

 そんなとき、自分たちがいれば守ることができる。

「ありがとう、ふたりとも。優しいなぁ」

 屈託(くったく)のない彼女の笑顔に、琴音はため息をついた。
 慧も無言でメガネを押し上げる。折れるしかなさそうだ。

 能力の性能からしても、いざというときは何とかなるだろう。

「……分かったわ、そこまで言うなら」



     ◇



 放課後になると、いつものように鞄にステッキを忍ばせた瑠奈は、指定されたファミレスへと急いだ。

 周囲の雑音も雑踏(ざっとう)も霞むほど緊張していた。

 もしかしたら今日、殺されるかもしれない。そんな不安と恐怖がついて回る。

 店内へ入ると、一番奥のテーブルに昨晩の男子を見つけた。
 ほかにふたりの姿があり、そのうちのひとりは別の高校の制服を身につけている。

 瑠奈は鞄の持ち手を強く握り直し、意を決して彼らに歩み寄った。

「来たよ、言われた通り……」

「よお、早かったな。まー、座れよ」

 不安気な瑠奈とは打って変わって、大雅は暢気なものだった。
 空いていた自身の隣を指しつつ言われ、おずおずと腰を下ろす。

 目の前に座る男子が、にっこりと柔和な微笑をたたえた。

「やあ、胡桃沢瑠奈ちゃん。きみのことはだいたい把握してる。素性や異能についてね」

 恐らく彼が話しているだろうに、声は隣にいる制服の異なる男子から発せられていた。

 ちぐはぐな状況に戸惑っていると、ドリンクのストローを離した大雅が口を開く。

「先に俺らの自己紹介からしとくな。俺は桐生大雅、星ヶ丘の1年。で、こいつは3年の如月冬真。こっちは緑葉(りょくよう)学園の2年、佐久間律」

 学校や学年もばらばらの3人だけれど、その共通点は言われずとも分かった。全員、魔術師だ。

 大雅がどこかふてぶてしいのは、魔術師ゆえの傲慢(ごうまん)ではなく、元からの性格だろう。

 不良っぽいし、敬語なんて使ったことがないといった雰囲気だ。

「……それで、あたしに何の用なの?」